大正屋 – 吉村順三

吉村順三の大正屋に行ってきました。好きな建築家の1人である、吉村順三設計の旅館「大正屋」が佐賀県にあることを知り、温泉と建築鑑賞を目的にふらりと行ってきました。大正屋のある嬉野温泉へは福岡から車で1時間半ほどで到着します。旅館前のロータリーに車を停め外観を眺めると、想像していたより特徴がなく、よく目にする鉄骨鉄筋の大型旅館といった出で立ちでした。間違った場所に来ていないか少し不安になりましたが、館内を少し散策すると吉村順三の特徴ともいえる安堵感のようなものが、建物の構造から伝わってきました。全体的特徴として天井が低い。特に、廊下に設けられた公用のトイレはとても低く、秘密の書斎みたいなプラーベート感がありました(笑)宴会場は開放的に天井が高く、隣接したラウンジは低く設定され、使用用途によって天井の高さが変わります。この天井の高低差と入組んだ間取りは、大浴場や客室全体に一貫してみられます。この柱は邪魔だから取っ払おうという思考ではなく、その死角を上手に使いプライベートを守るという工夫がいくつも見受けられます。使用用途が決められた狭い空間は気持ちが落ち着くし、薄暗い空間から見る鮮やかな緑はより美しく見えます。レストラン・漆喰のような素材でできた照明が低く設置され、腰下までの窓が適度な採光となり、やはり落着く空間だと感じました。大浴場前の休憩所も天井を低く、大浴場へ向かう空間は吹抜けで高く設定されています。

Camera : Nikon / D800

Lens : Angenieux 35-70mm F2.5-3.5