写真の見方 Ⅰ
マグナムフォトの一人アンリ・カルティエ=ブレッソン。学生の頃はあまり好きな写真家ではなかったんだけど、ここ最近、いくつかの写真がとても魅力的に感じる。シュルレアリスムの影響からキュビズムの彫刻家アンドレ・ロートに師事し、画家志望からのスタート。その後、写真に移行していった彼の視点はどこか絵画的だ。ライカに50mmレンズの装備で、瞬時に作られる構図はドラマチックなものから、虎視眈々とした中で作られるスナップ写真があるのだが、この何気ない視点で繰り出すスナップ写真がとてもいい。彼が1948年から1950年に撮影したインドと、国民党の末期の中国を撮影したプリントを事務所に飾り眺めていると、フイルムから転写したゼラチンシルバープリントが、当時の空間と僅かに繋がるような力を感じる。当時の光景を残す記録写真という領域だけでなく、ブレッソンがそこにいて眺めた視線に価値があるように思える。
写真家にとってもっとも重要な、そして同様にもっとも難しい作業は、カメラの使い方を習得することでも、現像でも、プリントでもない。〝写真的な見方〟を身につけることだ。それはつまり、自分の機材やプロセスの能力の観点から被写体を見て、目の前の光景からふさわしい要素や意味を瞬時に選び出し、自分が望む写真へと変換する能力であるのだ ーエドワード・ウエストン
ウエストンの言葉に心底共感し、ブレッソン然り、著名な写真家の写真を目の前にすると、全てにこの能力があるなと感心する。