Eugène Atget

アジェの写真は、どの写真にもその場にある気配を感じる。行ったことのない場所や時間にもかかわらず、四角い写真から、その時代の景色を覗いているような感覚に陥る。これは、オリジナルプリントではなくとも、デジタル信号に置き換えられた液晶モニターからでも感じることができる。アジェの写真は圧倒的に主観的でありながら画一的な仕事をしている。風景に向き合う視点は、斜めからの構図でも正面から捉えたような密度がある。

詳細

  • Jean Eugene Auguste Atget
  • 1857-1927
  • 1857年ボルドーの近くリブルヌに生まれたアジェは、幼くして両親と死別し神学校に学んだが、その後外国航路の商船の給仕として乗り込み、遠く南米まで行く機会を持つ。
  • 19世紀末、地方回りの役者を18年間続けた後、才能のないことを思い知らされて断念し、パリにいついた。そして、写真によってパリとその周辺の町を撮り続け、8000枚ともいわれるガラス乾板に克明な記録として残したのである。
  • 引用 :「世界の写真家101」多木浩二・大島洋編 新書館